看護師あんこ日記 episode27
休日なのに病院へ。看護師の院内勉強会に参加する土曜日
「お疲れ様ですー。……はぁ」
土曜日の午後1時すぎ。
せっかくの貴重な週末休みだというのに、私はなぜか、いつもの私服に「職員バッジ」だけを胸元にピンで留め、病院の5階カンファレンスルームのパイプ椅子に腰掛けていた。
部屋の空気は、昼食後の気だるさと、休日にわざわざ集められたスタッフたちのどんよりとした負のオーラで満ち満ちている。
ステージ上のスクリーンに映し出されているのは、
『最新の人工呼吸器のモード変更とアラーム対応について』
という、実に重厚なスライド。
そう。
今日は病棟で行われる、恒例の「院内勉強会」の日なのだ。
「休日くらい、アラームの音から解放してくれよ……」
私は心の中でそう呟きながら、必死に襲いかかってくる強烈な睡魔と戦うために、自分の太ももを強めにつねった。
時計の針の進みが、いつもの日勤の3倍くらい遅く感じられる。
/
「自由参加」のはずなのに断れない。看護師の休日研修
この勉強会。
案内チラシには、いつも小さく、
「※自由参加」
と書かれている。
でも、その文字を額面通りに受け取れるような雰囲気ではなかった。
前日の申し送りでも、師長から、
「明日の勉強会、みんなもちろん出席するよね? 8年目のあんこさんは、後輩たちのお手本として、しっかり聞いておくようにね!」
と笑顔で念を押されている。
はい。
私の中では、ほぼ参加決定。
しかも、この勉強会について、私がずっとモヤモヤしていることがもう一つある。
時間外の手当がつかないことだ。
約2時間の勉強会が終わったあと、私たちが手にするのは、参加名簿へのサインと、
「あ〜、勉強になったね」
という空気感だけ。
以前、疑問に思った同期が、
「これって時間外手当はつかないんですか?」
と先輩に聞いたことがある。
そのとき返ってきた言葉が、これだった。
「これは業務じゃなくて、自分のスキルアップのための『自己研鑽』でしょ?」
自己研鑽。
また、この言葉だ。
/
「自己研鑽」と業務の境界線って、どこにあるんだろう
もちろん、新しい医療の知識を学ぶことは大切だ。
医療は変わっていく。
新しい機器や治療法が導入されれば、看護師として勉強する必要もある。
患者さんに安全な看護を届けるために、自分の知識をアップデートすることは大切な仕事だと、私自身も思っている。
でも、
「自分が学びたいと思って勉強すること」
と、
「職場から参加を期待され、休日に行く勉強会」
は、本当にまったく同じものなんだろうか。
前方に座る後輩ナースの頭が、睡魔でカクン、カクンと揺れている。
その姿を見つめながら、私は猛烈な虚しさに襲われていた。
「私、自分の大切な休日を、なんでこんな気持ちで過ごしてるんだろう……」
学ぶことそのものが嫌なんじゃない。
問題は、
「いつ、何を、どんな形で学ぶかを、自分で選べないこと」
なのかもしれない。
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看護師として学びたい。でも「自分の時間」も大切にしたい
30歳になってから、私は自分の「時間の価値」を以前より強く意識するようになった。
仕事の時間なら、プロとして全力で働く。
必要な知識も身につける。
分からないことがあれば調べる。
患者さんのために必要なら、いくらでも勉強したい。
でも、一歩病院を離れたあとまで、
「看護師なんだから勉強して当然」
という言葉だけで、すべてを差し出し続ける働き方には違和感がある。
私の休日には、私の休日としての役割がある。
身体を休ませる。
友達に会う。
好きなものを食べる。
映画を見る。
旅行へ行く。
そして、本当に興味があることを、自分の意思で学ぶ。
それだって、私が長く看護師を続けていくためには大切な時間のはずだ。
「私の時間も、私の知識も、病院だけのものじゃないんだよね」
スクリーンを眺めながら、私の中で何かがパチリと切り替わった。
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本当の「自己研鑽」は、自分で選ぶものなのかもしれない
これからは、誰かに言われたからという理由だけで「自己研鑽」という言葉を受け入れるのはやめよう。
自分がもっと知りたい看護の分野を勉強するのもいい。
資格取得に挑戦するのもいい。
看護とはまったく関係のない本を読むのもいい。
ヨガを習うのだって、料理を覚えるのだっていい。
自分の人生を豊かにするために、自分自身が、
「これを学びたい」
と思って使う時間。
それこそが、私にとっての本当の「自己研鑽」なんじゃないだろうか。
誰かに与えられた勉強ではなく、自分で選んだ学び。
30代の私は、そんな時間をもっと増やしたい。
/
「研修は勤務時間内」も、転職先を選ぶ大切な条件に
「……以上で、本日の勉強会を終了します。皆さん、お疲れ様でした」
講師の言葉とともに、カンファレンスルームにパラパラと力ない拍手が響く。
スタッフたちが一斉にため息をつきながら立ち上がる中、私は胸元から職員バッジをパチンと外し、バッグの奥へしまった。
病院の自動ドアを抜けると、午後3時の暖かな太陽の光が私を迎えてくれた。
まだ、土曜日の午後は残っている。
「よし、今から速攻で帰って、着替えて街へ出よう!」
私はスマホを取り出し、最近見ている求人情報を歩きながらチェックした。
求人を見るときも、給与や休日だけじゃなく、
「研修は勤務時間内か」
「時間外の勉強会はあるのか」
「院内研修への参加はどのような扱いなのか」
そんな条件まで気になるようになっていた。
「私が欲しいのは、学ばなくていい職場じゃない」
「ちゃんと学べて、ちゃんと自分の時間も守れる職場なんだ」
そう思うと、自分が探している働き方が、また一つ明確になった。
誰かに決められた「当たり前」に流されるのではなく、自分の時間を自分の意思で使う。
私は、私の大切な時間を、私自身の幸せのためにプロデュースしていくんだ。
さあ。
ここからは私の休日。
重たい人工呼吸器のスライドは頭の隅へ追いやって、これから行くオシャレなカフェで頼む期間限定パフェについて、全力で「自己研鑽」することにしよう。
(episode 28へ続く)
💙あんこからのひとこと
episode27を覗いていただき、ありがとうございます!
現役ナースの皆さん。休みの日にノーギャラで受ける勉強会やミーティングに、「これって本当に私の義務…?」ってモヤモヤした経験、一度はありませんか?
「本当にそれ!」と激しく同意してくれた方は、ぜひ♡マークやコメントを残していってくださいね。私たちの休日は、私たちのもの! 30代、自分の時間を賢く守って生きていきましょう〜!

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