① まずは受給資格を確認する
基本手当を受けるには、原則として、
離職前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上
必要です。
一方、倒産・解雇などによる離職や、一定のやむを得ない理由による離職では、
離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上
で受給資格を満たす場合があります。
長年、常勤看護師として病院で勤務していた人であれば、雇用保険の加入期間については要件を満たしているケースが多いでしょう。
ただし、短期間の勤務を繰り返している場合などは、加入期間を確認してください。
「被保険者期間12か月」は単純な在職12か月とは限らない
雇用保険上の「被保険者期間」は、単に会社に在籍していた月数だけで数えるわけではありません。
原則として、離職日から1か月ごとに区切った期間について、
賃金支払基礎日数が11日以上ある月
または、
賃金支払基礎時間が80時間以上ある月
を1か月として数えます。
通常の常勤勤務であれば大きな問題になりにくいですが、休職期間が長かった場合などは確認が必要です。
② 離職票が届いたらハローワークへ
退職後、失業給付を希望する場合は、まず勤務先から離職票を受け取ります。
そして、住所地を管轄するハローワークで、
求職申込み
と
離職票の提出
を行います。
ハローワークでは、その内容をもとに受給資格があるか確認し、受給資格が決定されます。
退職しただけでは手続きは始まらない
ここは大切です。
勤務先を辞めたからといって、
自動的に失業給付の手続きが開始されるわけではありません。
自分でハローワークへ行き、求職申込みと受給手続きを行う必要があります。
ハローワークで必要になるもの
実際の必要書類は状況によって異なる場合がありますが、一般的には、
- 離職票1・2
- マイナンバーを確認できるもの
- 本人確認書類
- 写真
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
などを準備します。
最新の必要書類については、手続き前に住所地を管轄するハローワークへ確認しておくと安心です。
③ 受給資格決定後には「7日間の待期」がある
ハローワークで受給資格が決定したからといって、その翌日からすぐに基本手当が支給されるわけではありません。
受給資格決定後には、原則として7日間の待期期間があります。
この7日間は、自己都合退職か会社都合退職かに関係なく設けられる期間です。
そのため、
ハローワークで手続き → 7日間の待期 → その後に支給へ
という流れになります。
ただし、自己都合退職の場合は、さらに「給付制限」が加わることがあります。
④ 自己都合退職は原則1か月の給付制限
2025年4月1日以降に自己都合で退職した場合、正当な理由のない自己都合退職では、7日間の待期期間が終わったあと、原則1か月の給付制限があります。
以前は原則2か月でしたが、制度改正によって短縮されています。
つまり、一般的な自己都合退職の場合は、
受給資格決定
↓
7日間の待期
↓
原則1か月の給付制限
↓
基本手当の支給開始
という流れになります。
何度も自己都合退職を繰り返した場合は長くなることも
退職日からさかのぼって5年間に、正当な理由のない自己都合退職による受給資格決定が2回以上ある場合などは、給付制限が3か月となる場合があります。
⑤ 教育訓練を受けると給付制限が解除される場合もある
2025年4月以降は制度が変わり、自己都合退職でも、一定の教育訓練等を受講した場合には給付制限が解除される仕組みがあります。
対象になる教育訓練には条件があります。
看護師の場合でも、
「退職後に新しい資格を取りたい」
「専門分野を学び直したい」
と考えている人は、利用できる制度がないかハローワークで確認してみるとよいでしょう。
ただし、どの研修でも対象になるわけではありません。
⑥ 基本手当は何日もらえる?
基本手当を受け取れる日数を所定給付日数といいます。
所定給付日数は、
年齢
雇用保険の加入期間
離職理由
などによって変わります。
一般的な自己都合退職などの場合は、主に雇用保険の加入期間によって、
| 雇用保険の被保険者期間 | 所定給付日数 |
| 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
となります。
一方、倒産・解雇などの特定受給資格者などでは、年齢や加入期間によって、より長い給付日数になる場合があります。
⑦ 失業給付はいくらもらえる?
基本手当の1日当たりの金額を基本手当日額といいます。
基本手当日額は、原則として離職直前6か月の賃金をもとに計算されます。
基本手当日額は、おおむね賃金日額の50〜80%程度で、60歳以上65歳未満では45〜80%程度です。
給与が低い人ほど給付率が高くなる仕組みです。
ただし、基本手当日額には年齢ごとの上限があります。
2026年8月1日以降の上限額は、
| 年齢 | 基本手当日額の上限 |
| 30歳未満 | 7,450円 |
| 30歳以上45歳未満 | 8,270円 |
| 45歳以上60歳未満 | 9,110円 |
| 60歳以上65歳未満 | 7,830円 |
です。
最低額は2026年8月1日以降、2,562円です。
夜勤手当は計算に入る?
看護師の場合、気になるのが夜勤手当です。
基本手当の計算の基礎となる賃金には、原則として離職前6か月に支払われた賃金が使われます。
一方、賞与は通常この計算には含まれません。
そのため、夜勤手当など毎月の給与として支払われている手当がある場合は、実際の賃金額に影響します。
ただし、個別の給与項目がどのように扱われるか不明な場合は、ハローワークで確認してください。
⑧ 失業認定を受けるには求職活動が必要
基本手当は、一度手続きをしたら自動的に毎月振り込まれるものではありません。
ハローワークが指定する失業認定日に、失業状態であることの認定を受ける必要があります。
そして、その認定までの間に、一定の求職活動を行う必要があります。
ハローワークでは、
- 職業相談
- 職業紹介
- 求人への応募
- 一定のセミナーへの参加
などが求職活動として扱われる場合があります。
単にインターネットで求人を眺めているだけでは、求職活動として認められない場合もあります。
「何をすれば求職活動実績になるのか」は、受給説明会などで必ず確認してください。
⑨ 失業給付を受けられる期間は原則1年間
失業給付には期限があります。
基本手当を受けることができる期間は、原則として、
離職日の翌日から1年間
です。
ここを勘違いしやすいので注意してください。
たとえば所定給付日数が90日あるからといって、
「退職して1年後から90日分もらおう」
ということはできません。
受給期間が終われば、所定給付日数が残っていても原則として支給を受けられなくなります。
だからこそ、
失業給付を希望するなら、離職票が届いたら早めにハローワークへ行く
ことが大切です。
⑩ すぐ働けない場合は「受給期間延長」を確認
基本手当は、働く意思と能力があり、すぐに就職できる人を対象としています。
そのため、
- 妊娠
- 出産
- 育児
- 病気
- けが
などの事情で、しばらく働けない場合は、そのままでは基本手当を受給できないことがあります。
一方で、一定の条件を満たせば、受給期間を延長できる制度があります。
「今は働けないけれど、回復したら転職活動をしたい」
という場合は、ハローワークへ早めに相談してください。
⑪ 再就職が早く決まったら「再就職手当」の可能性
失業給付を受け始めたあと、早めに再就職が決まった場合、
「もう失業給付がもらえなくなって損なのでは?」
と思うかもしれません。
そこで確認したいのが再就職手当です。
基本手当の所定給付日数の3分の1以上を残して安定した職業に就き、一定の要件を満たすと、再就職手当を受け取れる可能性があります。
主な要件には、
- 所定給付日数の3分の1以上が残っている
- 1年を超えて勤務することが見込まれる
- 7日間の待期満了後の就職である
- 離職前の勤務先へ再雇用されたものではない
- 過去3年以内に再就職手当などを受けていない
- 受給資格決定前から内定していた勤務先ではない
などがあります。
再就職手当はいくら?
支給残日数によって支給率が変わります。
所定給付日数の3分の2以上を残して再就職
→ 基本手当日額 × 支給残日数 × 70%
所定給付日数の3分の1以上を残して再就職
→ 基本手当日額 × 支給残日数 × 60%
です。
そのため、
「失業給付を全部もらってから就職したほうがお得」
とは限りません。
良い求人が見つかったら、給付を使い切るために就職を遅らせるのではなく、再就職手当も含めて考えるとよいでしょう。
⑫ 自己都合退職では「最初の1か月の就職経路」に注意
自己都合退職などで給付制限を受ける場合、再就職手当には少し注意点があります。
待期満了後の最初の1か月間については、再就職手当の対象となるには、原則として、
ハローワーク
または
許可・届出のある職業紹介事業者
の紹介による就職であることが必要です。
看護師転職サイトや転職エージェントを利用している場合は、その事業者が該当するか確認してください。
再就職手当を考えている人は、
応募方法まで含めてハローワークに確認しておく
ことをおすすめします。
⑬ 転職サイトを使っていてもハローワークへ行く意味はある
看護師の転職では、民間の看護師転職サイトや求人サイトを使う人も多いでしょう。
そのため、
「転職サイトを使っているなら、ハローワークは必要ないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、失業給付を受ける場合は、ハローワークでの受給手続きが必要です。
また、ハローワークでは、
- 雇用保険の手続き
- 職業相談
- 求人紹介
- 再就職手当の確認
- 職業訓練の相談
などもできます。
つまり、
転職サイト=求人探し
ハローワーク=雇用保険手続き+求人・相談
というように、目的を分けて併用することもできます。
⑭ 離職理由は必ず確認する
離職票が届いたら、必ず確認したいのが離職理由です。
基本手当の給付日数や給付制限などは、離職理由によって変わることがあります。
たとえば、
自己都合退職
なのか、
倒産・解雇などによる会社都合
なのか、
正当な理由のある自己都合退職として特定理由離職者に該当する可能性があるのか
によって扱いが異なります。
離職票に書かれた離職理由について、
「実際の退職理由と違う」
と思った場合は、そのままにせずハローワークへ相談してください。
最終的な離職理由の判断は、ハローワークが本人と事業主双方の主張や資料などを確認したうえで行います。
⑮ 看護師が退職前に準備しておきたい失業給付チェックリスト
退職後に慌てないよう、次の項目を確認しておきましょう。
退職前
☐ 雇用保険に加入しているか確認する
☐ 雇用保険の加入期間を確認する
☐ 離職票が必要であることを勤務先へ伝える
☐ 退職理由がどのように扱われるか確認する
☐ 再就職までの生活費を準備する
退職後
☐ 離職票1・2を受け取る
☐ 離職理由を確認する
☐ 住所地を管轄するハローワークへ行く
☐ 求職申込みをする
☐ 受給資格決定を受ける
☐ 受給説明会に参加する
☐ 失業認定日に必要な手続きを行う
☐ 求職活動実績を作る
再就職が決まったら
☐ 就職日が決まったらハローワークへ連絡する
☐ 再就職手当の対象になるか確認する
☐ 必要な申請書類を提出する
退職後すぐに再就職しないなら「お金の流れ」を確認しよう
失業給付だけを見て退職後の生活を考えるのではなく、支出もセットで考えることが大切です。
退職後には、
健康保険料
国民年金保険料
住民税
家賃・住宅ローン
生活費
などの支払いが続きます。
一方、自己都合退職の場合は、7日間の待期に加えて原則1か月の給付制限があるため、退職した直後からすぐ基本手当が入るわけではありません。
そのため、退職前に、
「失業給付が入るまで何か月生活できるか」
を計算しておくと安心です。
まとめ|離職票が届いたら、早めにハローワークへ
看護師が退職後に失業給付を希望する場合、まず覚えておきたいのは、
退職しただけでは自動的に支給されない
ということです。
原則として、
離職前2年間に雇用保険の被保険者期間が12か月以上
あり、働く意思と能力を持って求職活動をしていることなどが必要です。
手続きの大まかな流れは、
退職
↓
離職票を受け取る
↓
ハローワークで求職申込み・離職票提出
↓
受給資格決定
↓
7日間の待期
↓
自己都合退職なら原則1か月の給付制限
↓
失業認定・基本手当の受給
↓
再就職
というイメージです。
そして、早めに再就職できた場合は、一定の条件で再就職手当を受けられる可能性があります。
失業給付は、
「できるだけ長く仕事をしないためのお金」
ではありません。
次の仕事を落ち着いて探し、より良い再就職へつなげるための制度です。
看護師として次の職場をじっくり選びたい人こそ、制度を正しく知って、上手に活用していきましょう。
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