求人票を見ていて、
時間外労働 月平均10時間
と書いてあったとします。
「月10時間なら、1日30分くらいかな」
「それなら今の職場より楽そう」
と思うかもしれません。
でも、この「月平均10時間」という数字だけで、
毎月10時間程度しか残業がない職場
と判断するのは少し早いです。
ある月は残業2時間。
別の月は20時間。
その平均が10時間という可能性もあります。
さらに看護師の場合は、
始業前の情報収集
申し送り
記録
委員会
研修
などが、求人票の「残業時間」にどこまで反映されているのかも気になります。
今回は、求人票の**「時間外労働 月平均○時間」**をどう読めばよいのか解説します。
そもそも「時間外労働」とは?
求人票でいう時間外労働は、一般に所定労働時間を超えて行う労働に関する情報です。
たとえば勤務時間が、
8:30〜17:30
となっている職場で、業務上必要な仕事を18:30まで行えば、所定労働時間を超える部分が時間外労働に該当し得ます。
ただし、法定労働時間と所定労働時間は同じとは限りません。
求人票を見る立場としては、まず細かな法律用語より、
「勤務表に書かれた時間以外に、実際どのくらい仕事をしているのか」
を確認することが重要です。
「月平均10時間」は毎月10時間という意味ではない
「平均」という言葉に注意しましょう。
たとえば、4か月の残業時間が、
4月 5時間
5月 8時間
6月 12時間
7月 15時間
なら、
合計40時間÷4か月
で、
平均10時間
です。
つまり「月平均10時間」でも、
毎月きっちり10時間残業しているわけではありません。
月によって差がある可能性があります。
「月平均5時間」と「月平均20時間」ではどれくらい違う?
年間で単純計算してみましょう。
月平均5時間
5時間×12か月
=年間60時間
月平均10時間
10時間×12か月
=年間120時間
月平均20時間
20時間×12か月
=年間240時間
月平均5時間と20時間では、
年間で180時間の差になります。
1日8時間勤務として単純換算すると、
22.5日分
に相当します。
月単位では小さく見える数字でも、年間で考えると大きな差です。
「月平均10時間」を1日あたりにすると?
月20日勤務と仮定して単純計算すると、
月平均5時間
5時間÷20日
=1日平均15分
月平均10時間
10時間÷20日
=1日平均30分
月平均20時間
20時間÷20日
=1日平均1時間
です。
もちろん実際には、
毎日30分残業する職場もあれば、
残業する日としない日がはっきり分かれている職場もあります。
あくまで働き方をイメージするための目安です。
平均だけでは「忙しい月」が分からない
平均残業時間を見るときの大きな注意点です。
たとえば、
職場A
毎月ほぼ10時間
職場B
通常月 ほぼ0時間
繁忙月 30〜40時間
でも、年間平均を取ると似た数字になる可能性があります。
自分が、
毎日少し残業する方がいいのか
それとも、
普段は定時だけれど、一部の時期に忙しくなる方がいいのか
でも感じ方は違います。
求人票で「月平均○時間」を見つけたら、
「繁忙期はありますか?」
も一緒に確認するとよいでしょう。
看護師は「勤務後の残業」だけを見ない
看護師の場合、残業というと、
勤務終了後に残って記録を書く
という場面をイメージしやすいでしょう。
しかし、実際の負担はそれだけではありません。
たとえば、
始業前の患者情報の確認
早めに病棟へ入って点滴準備
勤務後の記録
カンファレンス
委員会活動
院内研修
などがあります。
こうした時間がすべて適切に労働時間として管理されているのかは、職場によって状況が異なる可能性があります。
だからこそ、
求人票の「残業月平均○時間」だけで働きやすさを決めない
ことが大切です。
「前残業」はどう考える?
看護師では、
「8時30分始業だけど、情報収集のため8時には病棟にいる」
という働き方が行われている職場もあります。
重要なのは、その情報収集などが業務上必要で、使用者の指揮命令下で行われているかという点です。
必要な業務として行われている時間なら、単に「自主的に早く来ている」と処理できない場合があります。
求人を検討するときには、
「日勤の場合、皆さん何時ごろ病棟に入っていますか?」
と職場見学などで自然に確認する方法もあります。
記録残業がどのくらいあるか
看護師の残業理由として多いのが記録です。
勤務時間中は患者対応が続き、
勤務終了時刻になってから記録をまとめる、
というケースがあります。
求人票に、
残業月平均5時間
とあっても、
実際の勤務終了時刻がどうなっているかは求人票だけでは分かりません。
職場見学では、
勤務終了後に多くのスタッフが残っていないか
を見るのも一つの参考になります。
もちろん、その日の状況だけで職場全体を断定することはできませんが、確認材料にはなります。
委員会・研修の時間も確認したい
病院では、
感染対策委員会
医療安全委員会
教育委員会
などの活動があります。
さらに、
院内研修
勉強会
なども行われます。
ここで確認したいのは、
勤務時間内に行われるのか
それとも、
勤務終了後に行われることが多いのか
です。
月平均の残業が少なくても、月に数回、勤務後の委員会や研修がある職場なら、実際の拘束時間は長く感じる可能性があります。
固定残業時間と実際の残業時間は別
第4回で解説した固定残業代とも関連します。
たとえば求人票に、
固定残業代 30時間分
時間外労働 月平均10時間
と書かれていたとします。
ここで、
「30時間と10時間、どっちが本当なの?」
と思うかもしれません。
この2つは意味が違います。
固定残業30時間分
→ 固定残業代が何時間分として設定されているか
月平均残業10時間
→ 実際の時間外労働の平均的な実績を示す情報
です。
そのため、この2つを同じ数字として比較しないようにしましょう。
固定残業30時間なのに平均残業5時間なら?
たとえば、
固定残業代 30時間分
時間外労働 月平均5時間
という求人だったとします。
この場合、
固定残業時間と実際の残業時間には大きな差
があります。
それだけで良い・悪いを判断することはできませんが、
なぜ30時間分の固定残業代を設定しているのか
は確認したくなるところです。
求人票の数字に疑問があれば、応募前や面接時に質問しましょう。
「残業なし」と書いてあれば本当にゼロ?
求人広告では、
残業ほぼなし
残業なし
といった表現を見ることがあります。
「残業ほぼなし」は特に、明確な時間数ではありません。
月1時間なのか。
月5時間なのか。
繁忙期だけ発生するのか。
分からないからです。
可能なら、
「前年度の月平均時間外労働は何時間程度ですか?」
と具体的な数字で確認しましょう。
「残業少なめ」も数字に置き換える
同じように、
残業少なめ
という言葉も、人によって感じ方が違います。
今の職場で月40時間残業している人なら、20時間でも少なく感じるかもしれません。
一方、残業ゼロの職場から転職する人には20時間は多く感じるでしょう。
求人広告の形容詞より、
月平均○時間
という数字を確認することが重要です。
2つの求人を比較してみよう
架空の求人を比較します。
求人A
月給 300,000円
残業 月平均20時間
求人B
月給 290,000円
残業 月平均5時間
求人Aの方が月給1万円高いです。
年間では、
1万円×12=12万円
です。
一方、残業時間の差は、
20時間−5時間
=月15時間
年間なら、
15時間×12=180時間
です。
もちろん、時間外労働には残業代が支払われる場合がありますし、仕事内容や基本給も異なるので単純に比較することはできません。
しかし、
「月給1万円高い」というメリットと「年間180時間多く働く可能性」を両方見る
という視点は大切です。
残業代が別途支給されるかも確認
求人票では、
時間外手当
の扱いも確認しましょう。
残業した時間に応じて別途支給される求人もあれば、
固定残業代を採用している求人もあります。
特に、
月給が高い+固定残業代あり
という求人では、
給与が高い理由の一部が固定残業代というケースがあります。
第3・4・6回の記事と合わせて確認すると、給与の中身がかなり見えやすくなります。
看護師なら「夜勤前後の勤務」にも注目
残業時間とは少し違いますが、看護師の負担を考えるうえでは重要です。
たとえば、
夜勤入りの日の勤務開始時間
夜勤明けの退勤時間
夜勤後に記録が残ることがあるか
などです。
「夜勤16:30〜翌9:00」と求人票に書かれていても、実際には申し送りや記録で退勤が9:30になることが多ければ、体感的な拘束時間は長くなります。
面接や職場見学では、
「夜勤明けは皆さん何時ごろ退勤されていますか?」
と聞いてみるのもよいでしょう。
残業時間を見るときの7つのチェックポイント
求人票では、次の7項目を確認しましょう。
① 月平均の時間外労働は何時間?
まず具体的な数字を確認します。
② 毎月同程度なのか?
繁忙期があるかも確認します。
③ 固定残業代はある?
あれば何時間分かを確認します。
④ 超過分の残業代はどうなる?
固定残業代のある求人では特に重要です。
⑤ 前残業はある?
始業前の情報収集などの実態を確認します。
⑥ 記録・委員会・研修は勤務時間内?
看護師求人では重要な確認ポイントです。
⑦ 実際の退勤時間は何時ごろ?
求人票の数字だけでなく、現場の働き方も確認します。
面接で残業時間を聞くなら
残業について質問すると、
「楽をしたいと思われないかな」
と心配する人もいるかもしれません。
しかし、労働時間は転職先を選ぶ重要な条件です。
たとえば、
「求人票では時間外労働が月平均10時間とありますが、時期による差はありますか?」
なら自然です。
さらに、
「日勤の場合、スタッフの皆さんは平均して何時ごろ退勤されていますか?」
と聞けば、実際の働き方も確認できます。
看護師なら、
「委員会や研修は勤務時間内に行われることが多いでしょうか?」
という質問も有効です。
職場見学でチェックできること
職場見学の時間帯によっては、残業の実態を少し確認できることがあります。
たとえば日勤終了時刻近くなら、
スタッフがどの程度残っているか
記録している人が多いか
慌ただしい雰囲気か
などを見ることができます。
もちろん、1日の見学だけでその職場の平均残業時間を判断することはできません。
しかし求人票の数字と合わせて見ると、参考になります。
「月平均○時間」は大切。でも、それだけでは足りない
求人票の時間外労働欄は、とても重要です。
同じ給与なら、
残業月5時間
と
残業月30時間
では、生活への影響が大きく違います。
でも、平均時間だけを見ても、
繁忙期
前残業
記録
委員会
研修
などの実態までは分かりません。
そのため、
数字を見る → 内訳を考える → 現場で確認する
という順番がおすすめです。
「月給」だけでなく「時間」も求人条件
転職するときは、どうしても、
月給30万円
賞与4ヶ月
といったお金の数字に目が向きます。
でも、自分が職場に提供するものは労働時間でもあります。
月給が1万円高くても、毎月15時間多く残業するなら、それをどう評価するかは人によって変わります。
求人を比較するときは、
「いくらもらえる?」
だけではなく、
「その金額のために、どのくらいの時間を働く?」
という視点も持ってみてください。
求人票の見え方が大きく変わります。
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