求人票に、
退職金制度あり
と書いてあると、
「長く働けば退職金がもらえるんだ」
と安心するかもしれません。
でも、ここで少し立ち止まってみましょう。
何年以上働けば対象になるのでしょうか。
3年以上?
5年以上?
それとも勤続1年から?
さらに、
退職金はいくらくらいになるのか。
基本給をもとに計算するのか。
勤続年数で決まるのか。
ポイント制なのか。
求人票の「退職金制度あり」という一言だけでは、ここまで分かりません。
今回は、退職金制度を見るときに確認したいポイントを整理します。
まず「退職金制度あり」の意味を整理しよう
退職金制度とは、一定の条件を満たして退職した労働者に対して、勤務先が退職時に一定の給付を行う制度です。
ただし、すべての会社・法人に退職金制度の設置が法律上義務付けられているわけではありません。
そのため求人票では、
退職金制度あり
という記載自体が、一つの待遇情報になります。
ただし大切なのは、
「制度がある」ことと「自分が実際に対象になる」ことは別
という点です。
何年以上働けば対象になる?
退職金制度には、最低勤続年数が設定されていることがあります。
たとえば、
勤続3年以上
という制度なら、2年11か月で退職した場合、制度上の退職金対象にならない可能性があります。
一方、
勤続1年以上
から対象になる制度もあります。
求人票に、
退職金制度あり(勤続3年以上)
などと記載されていれば、対象条件が比較的分かりやすいです。
しかし詳細が書かれていない場合は、就業規則や退職金規程を確認する必要があります。
同じ「退職金あり」でも金額は大きく違う
2つの求人があったとします。
求人A
退職金制度あり
勤続3年以上
求人B
退職金制度あり
勤続3年以上
これだけを見ると条件は同じように見えます。
しかし実際には、
求人A
→ 勤続10年で100万円程度
求人B
→ 勤続10年で300万円程度
という差があることも考えられます。
つまり、
「退職金制度あり」だけでは制度の価値は判断できない
ということです。
退職金はどうやって計算する?
退職金の計算方法は勤務先によってさまざまです。
代表的には、
基本給連動型
勤続年数別の定額制
ポイント制
別表・支給率表による計算
などがあります。
たとえば基本給連動型なら、
基本給×勤続年数に応じた支給率
のような考え方をする制度があります。
ポイント制なら、
役職・職能・勤続年数などに応じてポイントを積み上げる
方式もあります。
そのため、
基本給が高い=必ず退職金も高い
とは限りません。
基本給が退職金に影響する場合もある
勤務先によっては、退職金の算定基礎として基本給を使うことがあります。
この場合、第3回で解説した基本給の高さが、退職金にも関係してきます。
たとえば、
求人A
基本給270,000円
求人B
基本給220,000円
で、同じ勤続年数・同じ支給率なら、基本給が高い求人Aの方が退職金も高くなる可能性があります。
ただし、退職金制度によっては基本給を使わない場合もあります。
必ず勤務先の規程を確認しましょう。
「中退共」など外部制度を使っていることもある
中小企業などでは、勤務先独自の退職金制度ではなく、外部の退職金共済制度を利用している場合もあります。
代表的なのが、
中小企業退職金共済制度(中退共)
などです。
このような制度では、事業主が一定額を掛金として積み立て、退職時に制度から退職金が支給されます。
医療法人や介護事業所などでも、独自制度ではなく共済制度を利用しているケースがあります。
求人票に、
退職金共済加入
などと書かれていたら、どの制度なのか確認してみましょう。
「退職金制度」と「企業年金」は別の制度の場合もある
求人票には、
退職金制度あり
のほかに、
確定給付企業年金
企業型確定拠出年金
などが書かれている場合があります。
これらは、退職後の給付に関係する制度ですが、仕組みは同じではありません。
そのため、
退職金制度なし=老後給付が何もない
とは限りません。
反対に、
退職金制度あり
と書かれていても、企業年金はない場合があります。
求人票では、それぞれ別の制度として確認しましょう。
自己都合退職だと減ることがある?
退職金制度では、
自己都合退職
と
会社都合退職
で支給率が異なる制度もあります。
たとえば、同じ勤続年数でも、
自己都合退職
→ 支給率80%
会社都合退職
→ 支給率100%
のような設計です。
また、定年退職、早期退職、死亡退職などで支給条件が異なることもあります。
そのため、
退職理由によって金額が変わるか
も確認ポイントです。
看護師の転職では「勤続年数リセット」に注意
看護師は転職回数が比較的多い職種でもあります。
退職金制度は、多くの場合、
その職場での勤続年数
をもとに計算します。
そのため転職すると、原則として新しい職場では勤続年数がゼロから始まります。
たとえば、
職場Aに5年
職場Bに5年
勤務した場合、
「通算10年」
として退職金が計算されるわけではないことが一般的です。
勤務先ごとに別々の制度として扱われます。
だからこそ、
長く働く可能性のある職場ほど、退職金制度を確認する意味が大きい
と言えます。
中途採用でも同じ制度が使われる?
中途入職者でも、正職員として入職し、制度の対象要件を満たせば、同じ退職金規程が適用されることが一般的です。
ただし、
正職員のみ対象
非常勤・パートは対象外
有期契約職員は対象外
など、雇用形態によって制度対象が異なる場合があります。
求人票に「退職金制度あり」と書かれていても、
自分の雇用形態が対象か
は確認しておきましょう。
「勤続3年以上」は3年で高額になるという意味ではない
求人票に、
勤続3年以上
と書いてあると、
「3年働けばしっかり退職金がもらえる」
と思うかもしれません。
でも、これは多くの場合、
制度上の支給対象になる最低ライン
を示しているだけです。
退職金は、勤続年数が長くなるほど支給額が大きくなる制度が多いため、
3年勤務での金額と、
10年勤務、
20年勤務
では大きく違うことがあります。
「3年以上」という数字だけで退職金の多さは判断できません。
2つの求人を比較してみよう
たとえば、
求人A
月給 300,000円
退職金制度なし
求人B
月給 290,000円
退職金制度あり
勤続3年以上
とします。
毎月の給与だけなら求人Aが1万円高いです。
年間では、
1万円×12=12万円
の差です。
でも、10年勤務した場合、
求人A
→ 退職金0円
求人B
→ 退職金200万円
だったとしたら、長期的な待遇は大きく変わります。
もちろん実際の退職金額は制度によります。
しかし、求人を比較するときに、
月給だけでなく長期的な給付も見る
という視点は大切です。
「退職金あり」を年収に足して比較するのは難しい
賞与は毎年支給されるため、想定年収に含めて比較しやすいです。
一方、退職金は、
何年働くか
によって金額が大きく変わります。
そのため、
「退職金200万円だから年収に20万円上乗せ」
のような単純比較はしにくいです。
退職金は、
長期勤務した場合の将来給付
として別枠で考える方が分かりやすいでしょう。
求人票で退職金を見るときの7つのチェックポイント
退職金制度を見つけたら、次の7項目を確認してみてください。
① 退職金制度はあるか
まず制度の有無を確認します。
② 何年以上勤務すれば対象か
「勤続3年以上」などの最低勤続年数を確認します。
③ どの雇用形態が対象か
正職員だけなのか、契約職員も対象なのかを確認します。
④ どうやって金額を計算するか
基本給連動、ポイント制、別表方式など制度を確認します。
⑤ 自己都合退職で支給率が変わるか
退職理由による違いも確認したいポイントです。
⑥ 退職金共済に加入しているか
中退共など、外部制度を利用している場合があります。
⑦ 長く働いた場合にどのくらいになるか
10年、20年勤務した場合のモデル額を確認できると、比較しやすくなります。
面接で退職金について聞いていい?
もちろん確認して構いません。
ただし、
「退職金はいくらもらえますか?」
だけでは答えにくい場合があります。
おすすめは、
「求人票に退職金制度ありとありますが、何年以上勤務した場合に対象になりますか?」
や、
「退職金の算定方法は、基本給や勤続年数を基準にする制度でしょうか?」
といった聞き方です。
さらに長期勤務を考えているなら、
「10年程度勤務した場合のモデルとなる退職金額はありますか?」
と確認できれば、制度をイメージしやすくなります。
就業規則・退職金規程も確認する
退職金制度の詳しい内容は、
就業規則
退職金規程
などに定められていることがあります。
採用前に規程全文を確認できるとは限りませんが、少なくとも内定後、労働条件を確認する段階では、
対象条件
支給方法
勤続年数
などを確認しておくと安心です。
「退職金制度あり」だけで安心しない
求人票の、
退職金制度あり
という言葉は魅力的です。
でも、本当に知りたいのは、
何年以上働けば対象?
いくらくらいになる?
どうやって計算する?
自己都合でも同じ?
自分の雇用形態は対象?
ということです。
同じ「退職金制度あり」でも、制度内容によって価値は大きく違います。
求人票を見るときは、
「ある・なし」から、「中身はどうなっている?」へ。
これが退職金を見るポイントです。
長く働くつもりなら、退職金は重要な条件
転職するときは、
月給や年間休日など、すぐに実感できる条件に目が向きやすくなります。
でも、10年、20年と働く可能性があるなら、
昇給
賞与
退職金
といった長期的な待遇も大切です。
求人票を見るときは、
今月いくらもらえるか
だけでなく、
この職場で長く働いたら、どんな待遇になるのか
まで考えてみてください。
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