看護師あんこ日記 episode19
夜勤明けのクマと肌荒れ。30歳になって疲れが顔に残るようになった
「……あぁ、やっぱりここに居座ってる」
夜勤明けの午前10時。
お風呂上がりに洗面台の鏡を覗き込んだ私は、自分の顔を見て思わず深い、深いため息をついた。
目の下にクッキリと刻まれた、頑固な青黒い「クマ」。
どんなにたっぷり睡眠をとっても、コンシーラーを親の仇のように叩き込んでも、絶対に消えてくれない私の“夜勤の勲章”が、今日も元気に自己主張している。
さらに、顎のあたりには、昨日まではなかった不穏な赤ニキビがポツリ。
「デパコスであんなに高い美容液買ったのに! 先週、ご褒美に1万5千円のエステにも行ったのに……!」
鏡に向かって抗議してみるけれど、もちろん鏡の中の疲れ果てたアラサーナースは、カサカサの唇で力なく微笑み返してくるだけだ。
8年目の夜勤明け。
20代の頃なら、夜勤明けにそのまま友達と渋谷でランチをして、カラオケに行って、ちょっと寝れば翌朝にはツヤツヤの肌が復活していた。
しかし、30歳を迎えた今の私の細胞たちは、そんな無茶な働き方に完全なるストライキを起こしていた。
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夜勤で稼いだお金が、美容代に消えていく悪循環
現在の私の夜勤回数は、2交替で月4回。
夕方から翌朝まで、緊張感で張り詰めた病棟を走り回り、仮眠時間という名の「いつ急変に呼ばれるか分からない2時間のうたた寝」を挟んで、また働く。
朝に帰宅して、遮光カーテンをこれでもかと閉め切った暗い部屋で眠る。
でも、お昼過ぎに「パチッ」と目が覚めてしまい、そこから夜までダラダラと過ごす。
結果、夜の寝つきが悪くなり、次の日勤の朝は寝不足でフラフラ。
このボロボロになった肌と体を修復するために、私の給与明細から、毎月かなりの額の「美容代」が消えていく。
デパコスのカウンターで美容部員さんに、
「乾燥されてますね、しっかり水分を入れましょう!」
と言われ、おすすめされるがままに1本1万円超えの導入液を購入する。
休みの日にわざわざ予約をとって、高級なフェイシャルエステに通う。
でも、ある日、エステのベッドの上で施術を受けながら、私は冷静に頭の中で計算してしまった。
「待って。私、夜勤で稼いだお金を、夜勤でボロボロになった肌の修復のために使ってない……?」
夜勤をする。
肌と体がボロボロになる。
美容に課金してリセットを試みる。
そして、また夜勤をする。
これ、終わりのない「悪魔のサイクル」ではないか。
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高いスキンケアでも消せない「夜勤疲れ」
どれだけ高級なスキンケアに課金したって、それはあくまで表面的な対策なのかもしれない。
エステの帰り道、ドラッグストアの鏡に映った自分の顔をふと見たとき、なんだか猛烈に虚しさが込み上げてきた。
高いファンデーションでクマを隠し、リップで血色感を足している。
でも、顔全体からにじみ出る「どんよりとした疲労感」までは、どうにも隠しきれない。
「私が本当に欲しいのは、デパコスの美容液じゃない」
新宿の交差点で信号待ちをしながら、私は眩しい太陽の光を見上げた。
「朝、太陽の光で気持ちよく目が覚めて、お昼に美味しいご飯を食べて、夜は自分のベッドで日付が変わる前に眠る」
「そんな規則正しい生活がしたいだけなんだ」
看護師という仕事は好きだし、誇りもある。
でも、自分の健康や生活リズムまで犠牲にして、この急性期病棟にしがみつき続ける必要は、もうないんじゃないだろうか。
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「夜勤なし・日勤のみ」の看護師求人が気になり始めた
30代の10年間を、また同じように「夜勤疲れ」と「肌荒れ」に悩みながら過ごすなんて、絶対に嫌だ。
これからは、外見を取り繕うためのスキンケアだけじゃなく、自分の心と体を内側から労わってあげられる「働き方」を選びたい。
家に帰り着き、私はロッカーの奥に眠っていた「日勤のみ・夜勤なし」の転職パンフレットを引っ張り出してきた。
クリニック。
健診センター。
訪問看護。
企業の健康管理室。
夜勤のない働き方に変われば、今より給与が下がる可能性はある。
でも、毎晩自分のベッドで眠れて、生活リズムを整えられるなら、それも大きな価値なんじゃないだろうか。
高いエステ代や美容液代まで含めて考えたら、意外と悪くない選択なのかもしれない。
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30代は、夜勤より「規則正しい生活」を大切にしたい
「よし、30代は『内側から健康的な美人』を目指すぞ!」
洗面台に戻り、お気に入りのプチプラの化粧水を、手のひらで優しく顔全体にパッティングする。
高級な魔法の薬だけに頼る生活は、もうおしまい。
朝起きて。
昼に活動して。
夜は自分のベッドで眠る。
そんな当たり前の生活を大切にできる働き方を、そろそろ本気で探してもいい。
私はスマホを手に取り、検索窓へゆっくり文字を打ち込んだ。
「看護師 夜勤なし」
「看護師 日勤のみ」
「看護師 健診センター」
30歳。
今度はスキンケアではなく、働き方そのものから、自分を大切にしてみよう。
(episode20へ続く)

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